第54話 Lost Memories~セシリー SIDE~(中篇)

EverQuest2

???「セシリー! セシリー!!」
???「・・・・・・え?」
えっと、ここは? 芝生の真ん中に噴水があり、僕と女ダークエルフが座っている。
???「大丈夫、Seshiry?」
ああ、城の中庭か。
Seshiry「あ、うん平気だよ。アリー」
アリー「どうかしたの? 急にぼーっとして、いくら呼びかけても返事なかったし」
Seshiry「ごめん、ごめん。ちょっと考え事してたんだ」
アリー「へ~、あなたでも思い悩んだりすることがあるのね」
Seshiry「あ、それはひどい言い草だね。僕だってたまには思い悩んだりするさ。今日の夕飯はなんだろうとか」
アリー「まあ、ふふふ」

僕の名前はSeshiry。ダークエルフで専攻はEnchanter。今はNektropos Castleで、Everling伯爵の研究チームに入っている。Everling伯爵といえば、代々優秀なCasterを輩出してきた家として有名で。特に現在の当主、8代目の彼は歴代の当主の中でも特に優秀で、Caster系魔法の他にHealer系魔法まで習得している。まさに巷の人々が噂するとおり『スペルマスター』なんだ。そんな『スペルマスター』の研究チームに、僕が選ばれるなんて夢にも思わなかったよ。
アリー「また、考え事?」
Seshiry「ううん」
あ、彼女の名前はアリー。専攻はNecromancer、彼女も僕と同じ研究チームのメンバーだ。僕と彼女は年が近いせいか、それとも同時期にチームに加わったせいか仲が良く、いつも他愛ないおしゃべりをしている。
アリー「そろそろ、研究室に戻りましょうか」
Seshiry「そうだね」
中庭から城の研究室に戻る道をアリーと一緒に歩く、いつも思うけどホントきれいなお城だよね。外壁は白で統一されていて、そのレンガには魔法が込められているため風化することもない。

僕たちが研究室に戻ると、僕らよりちょっと年の離れた女性ダークエルフがなにやら書類をまとめていた。
Seshiry「セシリー、アリー両名。ただいま戻りました」
???「あら、早かったわね。もう少しゆっくりしていてもいいのに」
アリー「いえいえ、Alexa先輩一人だけ働かせるわけにはいきませんから。先輩も少し休んできたらどうです?」
Alexa「う~ん、お言葉に甘えようかしら」
アリー「どうぞ~」
この人の名前はAlexa。専攻はCleric。彼女は僕たち2人が来る前から伯爵と研究を続けていた。とてもきれいな人なんだけど、時々寂しそうに遠くを見つめていることがあるんだよね。なぜ、Caster中心の研究にClericの彼女が加わっているんだろう? ミステリアスな人だ。
Seshiry「あ、マスターは奥ですか? 先輩」
Alexa「ええ、そうよ。じゃ、悪いけど少しの間お願いね」
アリー「はい、いってらっしゃい」
Alexa先輩は部屋を出ていった。やっぱり中庭に行くのかな?
アリー「じゃ、私は先輩の書類をまとめるから、あなたはマスターの手伝いをお願い」
Seshiry「OK~」

奥の部屋に入ると40過ぎくらいの魔術師が、フラスコやビーカーとにらめっこしていた。
Seshiry「失礼します」
???「お、帰ってきたかセシリー君。しっかり休憩できたかい?」
Seshiry「はい、外はいい天気で中庭に出ると気持ちいいですよ。マスターもたまにはどうです?」
マスター「うん、後で行ってみるとするよ」
Seshiry「で。また、何かにEnchant(魔力付与)ですか? マスターEverling」
マスターEverling「うむ、早速このフラスコにEnchant頼むよ」
Seshiry「分かりました~」
この人が『スペルマスター』のEverling伯爵。その肩書きに似合わず気さくな人だ。僕の仕事は主に物質にEnchant(魔力付与)することで、後は時々Enchantについてのアイディアを聞かれるくらいかな。こんなEnchantくらい、マスターなら朝飯前だろうに何故かいつも僕に頼むんだよね。でも、一体何の研究なんだろ?

そう、実は僕。これがなんの研究に使われているのか、よく知らないんだよね。マスターの専攻は『魔法統合学』、この分野はマスターが唱えた新たな分野で、従来の魔法をミックスさせて新しい効果を得るものらしいんだけど、マスターみたいに全ての魔法を習得していることが前提って所がネックで、まだまだ 魔法会には広まってない技術。とゆーか、全ての魔法を習得しているのなんて、現存している魔術師ではマスターだけだもの。そんなマスターが新たに始めた研究に今、僕は参加している。

ある日、Alexa先輩に聞いてみたんだけど。
Seshiry「ねえ、先輩は昔からマスターの助手をしてるんですよね?」
Alexa「ええ、そうよ」
Seshiry「マスターの今の研究ってどんな研究なんですか?」
Alexa「・・・・・・そのうち分かるわ」
う~ん、ミステリアスなAlexa先輩にこんな風に言われると余計気になるんだけど。ま~、そのうちマスターも教えてくれるかな。おっと、興味は尽きないけどまずは仕事をこなさなきゃね。
Seshiry「こほん。万能なるマナよ、このフラスコに不滅なる輝きを与えたまえ!」
ぽんっ
よし、Enchant完了。これでこのフラスコは特別な液体を入れたり、その効果をいつまでも保つことができるようになった。
Seshiry「マスター、できました」
マスターEverling「おお、早いね。その調子で後200個ばかし頼むよ」
Seshiry「はい」
マ、マスター200個って多すぎだよ! ああ、だからいつも僕に頼むのか納得。とても1回ではEnchantしきれないので、僕は休み休みマナを回復させEnchantしていく。こんな風にして、僕の日常は過ぎていった。

この城に来て3ヶ月くらいだろうか。突然マスターが、娘さんたちを紹介してくれた。娘さんたちは全員で6人。6人ともマスターには似なかったらしく美人ばかりだ。マスターの奥さんはずっと前に亡くなっているんだけど、それはきれいな人だったそうだよ。娘さんたちの性格はばらばらで、一番長女のDeirdreお嬢様は、とても落ち着いてる感じ。2番目のJenniお嬢様は知性的なんだけど、ちっとも偉そうにしないんだよね。姉妹たちはみんな仲が良いけど、3番目と4番目のMelanieお嬢様とCrystaお嬢様は特に仲良しだ。
Crysta「さ~て、今日の夕食は何かな~?」
Melanie「子羊のローストがメインよ。カロリーは536kclでそのカロリーを消費するには・・・・」
Crysta「はい、スト~ップ。食事の時にカロリーのことなんて言わないでよ、Melanieお姉さま。おいしく食べれればそれでいいじゃない」
と、まあ。楽天家のCrystaお嬢様を、Melanieお嬢様が冷たくつっこむというかなんというか。でも、不思議とケンカにはならないんだよね。

5番目のSheilaお嬢様はとても無口。僕は出会ってからまだその声を聞いたことがない。いったいどんな声をしているんだろう? 一番下のEliseお嬢様はとても寂しがり屋。まだ8歳だもの、お母さんを亡くして辛いよね。僕は比較的Eliseお嬢様と話す機会が多い。あ、別に僕の精神年齢が低いからとかじゃないよ?
Elise「でね。次のエリーゼの誕生日には、おっきいクマさんのぬいぐるみ買ってもらうんだ~」
Seshiry「え、でも部屋にはもう、こんなにたくさんのクマのぬいぐるみがあるじゃない?」
Elise「で、でもほしいの!」
ま、まずい。エリーゼの顔が歪んだ。泣く一歩手前である・・・・・・。
Seshiry「そ、そうだね。やっぱりおっきいほうが一緒に寝たりしても楽しいよね」
必死に取り成すがエリーゼの顔は変わらない。今にも泣き出しそうだ。
Seshiry「あ、そうだ。僕もエリーゼの誕生日にはクマのぬいぐるみプレゼントするよ」
Elise「え、本当?」
Seshiry「うん、誕生日の日クマのぬいぐるみを持って部屋に来るよ」
Elise「約束?」
Seshiry「うん、約束するよ。エリーゼ」
エリーゼは、うん。と大きくうなずき笑顔に戻った。ふう、よかった。あ、でもエリーゼの誕生日って来月の25日だっけ。う、う~んお金が。アリー貸してくれるかな・・・・・・。

エリーゼの誕生日も近づいてきたある日、僕はマスターに呼ばれ部屋にやってきた。部屋に入るとすでにアリーとAlexa先輩がいた。どうやら僕が最後だったみたい。ん? Alexa先輩、顔色が悪いなどうしたんだろ?
マスターEverling「揃ったようだね」
アリー「お話とは何でしょう、マスター?」
マスターEverling「うん、そろそろ君たちに私の研究内容を明かそうと思ってね」
Seshiry「おお、ついに教えてくれるんですか!」
マスターEverling「うむ」
僕とアリーはお互いに顔を見あい、喜んだ。
マスターEverling「これから話すことは一切、他言無言に願うよ」
Seshiry「え?」
アリー「どういうことでしょう?」
マスターEverling「私が現在行っている研究。それは・・・・・・死者を蘇らすことだ!」
アリー & Seshiry「!!」
Alexa「・・・・・・」
Seshiry「マ、マスター。それは魔法協会で禁忌とされていることですよ!」
マスターEverling「解っている。しかし、他に方法がない。私はなんとしても、もう一度妻に会いたいのだ!」
アリー「奥様に・・・」
マスターEverling「そう。その為にはアリー君のネクロマンシー(死霊術)、セシリー君のEnchant(魔力付与)、Alexaの蘇生魔法が必要なのだ。そしてその3つの魔法を私が統合する」
Seshiry「し、しかしマスター」
アリー「セシリー、私はマスターに協力するわ」
Seshiry「アリー!?」
アリー「確かに禁忌かもしれない。でも、マスターの奥様にもう一度会いたいって気持ちもとてもよく分かるわ。セシリー、もしあなたが大切な誰かを失ったら、禁忌を犯してでも会いたいと思わない?」
Seshiry「アリー・・・・・・分かりました、マスター。僕も協力します」
マスターEverling「おお、やってくれるか。ありがとう2人とも! では、儀式の決行は25日。それまでに各自これらのことを準備しておいてくれ」

儀式に必要なもの、儀式の手順を細かく聞いた僕らはマスターの部屋を後にした。
Seshiry「先輩は全部知っていたんですね?」
Alexa「ええ」
Seshiry「どうして、何も言ってくれなかったんですか!?」
Alexa「・・・・・・」
Alexa先輩は何も言わず、離れていってしまった。
アリー「言えるわけないでしょ、セシリー」
Seshiry「でも!」
アリー「先輩の気持ちも分かってあげて」
Seshiry「気持ち?」
アリー「そう、気持ちよ・・・・・・ねえ、セシリーもしあたしが死んでしまったら、あなたは私を生き返らせてくれる?」
Seshiry「そ、それは・・・・・・」
僕は思わず言葉に詰まってしまう。
アリー「意気地なし・・・・・・」
アリーは足早に去ってしまった。

儀式の日に向けて準備は着々と進んでいったけど、あれ以来、僕とアリーの関係はぎくしゃくしたままだ。Alexa先輩もなんだか暗い顔をしていることが多くなった。
Deirdre「浮かない顔ね、セシリー」
Seshiry「Deirdreお嬢様」
Deirdre「はは~ん。アリーとケンカでもしたんでしょ?」
Seshiry「どうしてそれを!?」
Deirdreお嬢様は、一瞬きょとんとした顔になったかと思うと突然笑い出した。
Deirdre「ぷっ、ふふふ。あなたは正直ね、セシリー」
Seshiry「あ」
引っ掛けられたみたい・・・・・・。
Deirdre「ケンカの原因は?」
Seshiry「えっと、もし私がいなくなったらどうする? みたいな質問されて、僕は答えることができなくて」
Deirdreお嬢様は、ふぅとため息をついた。
Deirdre「なぜ、あなたは答えられなかったの?」
Seshiry「いや、質問の意味がよく分からなくて。それに突然だったし」
Deirdre「鈍感ね~。きっと彼女はあなたのことが好きなのよ」
Seshiry「え、アリーが僕を?」
Deirdre「そう。だから、あなたに『必ず探し出すから!』と答えてほしかったのよ」
Seshiry「・・・・・・」
Deirdre「今度、アリーに会ったら一度ゆっくり話してみることね」
Seshiry「はい、そうしてみます」
Deirdre「じゃ、私はそろそろ行くわね」
Seshiry「色々ありがとうございました」

そして、ついに儀式の日がやってきた。結局、僕はアリーとゆっくり話す機会を持てなかった。彼女の横顔を見てみると心なしか緊張しているようだ。
マスターEverling「皆、用意はいいかな?」
セシリー「いつでも」
アリー「はい、用意できてますわ」
Alexa「・・・・・・はい」
マスターEverling「では、始めよう。まずは水35リットル、炭素20g、アンモニア4リットル、石灰1.5kg、リン800g、塩分250g、硝石100g、硫黄80g、フッ素7.5g、鉄5g、ケイ素3gにEnchantしてくれセシリー君」
セシリー「はい、マスター」
僕はひとつずつ丁寧にEnchantしていった。これらの物質は人間の大人一人分の構成物質だそうだ。
マスターEverling「よし、次は死者の魂。私の妻シェリーの魂をここによんでくれ、アリー君」
アリー「はい・・・・・・眠りにつきし魂、シェリーよ。私の声に応えてちょうだい」
アリーのネクロマンシーを直に見るのは初めてだけど、なかなか魂が応えてくれないみたいだ。
Alexa「来たわ!」
一人の女性が空から降りてきた、彼女の体は透明で透き通っている。
マスターEverling「おお、シェリーよ」
シェリー「あなた・・・・・・」
マスターEverling「今だ、Alexa蘇生呪文を!」
Alexa「・・・・・・」
マスターEverling「どうした、Alexa?」
Alexa「いえ、何でもありません・・・・・・大いなる神よ、失われた魂を再び肉体に根付かせ給えResolution!」
シェリーさんの魂が僕がEnchantした物質に溶け込んでいった。

マスターEverling「ようやくこの時がきたか・・・・・・」
ばたん
マスターが何か呟くと、突然マスターの体から力が抜け倒れてしまった。
Seshiry「マスター!?」
マスターの体から透明な体が現れる。そしてそれは僕がEnchantした物質、シェリーさんの新しい体に向かっていった。
マスターEverling「ようやく、君と一つになれるシェリー・・・」
吸い込まれるようにマスターの魂がシェリーさんの肉体に入っていく。
アリー「先輩、これは一体!?」
Alexa「私にも分からないわ。一体あの方は何をしようというの!?」
僕らが見守る中で2人の魂が入ったそれは形づいていく、体は幽霊のように透明だが、幽霊とは違いはっきりと見える。
マスターEverling「ククク、フハーッハハ。すばらしい、すばらしいぞこの体は!!」
アリー「マスター、一体どういうことですか! あなたは奥様を生き返らせるために、この儀式を行ったんじゃなかったんですか!?」
マスターEverling「ああ、そうとも妻は生き返った。そして今度は2度と死なせない。永遠に私の中で行き続ける!」
アリー「永遠って、そんな不安定な体いつまでも保っていられるわけが」
マスターEverling「大丈夫だ。生きた人間の体を摂取することで、いつまでもこの体を保つことができる」
アリー「生きた人間を摂取するですって!?」
マスターEverling「そうだ。私はこの世界を巡り、生きた人間から栄養をもらい、そして私がこの世界を支配する!」
アリー「そんなことさせるもんですか!」
マスターEverling「・・・・・・ネクロマンサーは年々減少の傾向にある。その貴重なネクロマンサーを失うのは惜しいと思い、生かしておいてやろうと思ったが、逆らうなら話は別。さようならだ、アリー!」

マスターだった者がアリーを指差すとその指から光線が飛び、アリーの脚を貫いた!
アリー「きゃああああ!」
Seshiry「アリー!!」
アリーの脚から多量の血が流れ床に染みを作っていく。
マスターEverling「ふむ。術を完成させたお礼に苦しまずに殺してやろうと頭を狙ったのだが、まだまだこの体は本調子ではないか」
Seshiry「マスター!!」
マスターEverling「私はもうマスターEverlingではない! 呼ぶならこの世界の王、Lord Everlingと呼ぶがいい!」
Seshiry「ふざけるな!」
Lord Everling「セシリーよ、お前も我に逆らう気か?」
Seshiry「当たり前だ!」
Lord Everling「そうか、残念だ」
Lord Everlingが僕のほうに指を向けようとする。
Seshiry「光よ。やつの影を消せColor Slant!」
七色の光が部屋中に輝き、Lord Everlingの影を消す。
Lord Everling「む、動けん!」
Seshiry「今です、先輩」
僕はアリーを抱きかかえると、Alexa先輩と一緒に廊下に飛び出した。
Lord Everling「ひ弱なEnchanterと思いあまく見たか。まあいい、まずは腹ごしらえといくか」

僕らは城の外に向かいながら走り、中庭の噴水に辿りついた。アリーは痛みで気を失ったままだ。
Seshiry「先輩、早くアリーに治療呪文を!」
Alexa「・・・・・・ごめんなさい、できないわ」
Seshiry「どうして!?」
Alexa「彼女はネクロマンサーで私は僧侶。魔力の性質が正反対だから、干渉しあって魔法の効果が消えてしまうの」
Seshiry「そ、そんな」
Alexa「・・・・・・ごめんなさい」
アリー「セシリー、あまり先輩を困らせないで」
Seshiry「アリー、気がついたのか」
アリー「セシリー、先輩。2人はこの事を魔法協会に知らせて頂戴!」
Seshiry「君も一緒に!」
アリー「いえ、私は残るわ。この傷では走れないし」
Seshiry「なら、僕が背負っていくよ!」
アリーは静かに首を横に振り、言った。
アリー「セシリー、分かって。今は確実に魔法協会に知らせることが大事だわ。先輩、頼みます」
Alexa「・・・・・・分かったわ。先に行く、門で待っているからね。セシリー」
Alexa先輩は門に向かって歩き出す。
Seshiry「アリー・・・・・・」
僕の瞳がぼやけ、何かが流れ落ちた。
アリー「泣かないで、セシリー。私はここであなたを待っているから、魔法協会に知らせたら迎えにきて」
Seshiry「でも、でも・・・・・・!」
なおも言葉を返そうとする僕の口にアリーが唇を重ねて、言葉をふさいでしまった。
アリー「約束よ、必ず迎えにきてね」
Seshiry「・・・・・・必ず、必ず帰ってくるから!」
アリー「うん・・・・・・」
僕は門に向かって走り出した。
一度だけ振り返ると、アリーが笑顔で何か言っていた。僕はうなずいてAlexa先輩が待つ門へと向かった。
アリー「さて・・・いこうかな・・・」

門に着くとAlexa先輩が待っていた。
Alexa「・・・・・・もう、いいのね?」
Seshiry「はい、行きましょう先輩」
Alexa「ここから1番近い町はNeriak City。急ぐわよ!」
Seshiry「はい!」

僕と先輩はNeriak Cityに向かって森の中を走った。その途中、
Alexa「痛っ」
突然、Alexa先輩は立ち止まり地面に座り込んでしまった。
Seshiry「どうしました先輩、足でもくじいたんですか?」
僕が先輩に近寄った。次の瞬間、
ドンッ!
痛みがきた。僕は一瞬自分の身に何が起こったかのか、分からなかった。胸の辺りがひどく痛む。目を向けるとそこにナイフが突き刺さっている。
Seshiry「・・・・・・Alexa先輩」
Alexa「ごめんなさい、セシリー。私にはもうこうするしか」
僕の体から何かが零れ落ちていく、いつの間にか地面に横たわっていた。
Seshiry「どうして・・・・・・?」
Alexa「あの人を守るため」
Seshiry「あの人?」
Alexa「あの人・・・・・・そうEverlingを守るためよ!」
Seshiry「先輩・・・・・・」
Alexa「あの人は両親を失った私を引き取って、実の娘のように育ててくれた。そんな彼を見る目がいつしか、父親から一人の男に変わっていったわ。でも、あの人の目にはシェリーさんしか映っていなかった」
Seshiry「・・・・・・」
Alexa「シェリーさんが亡くなって、初めて彼は私を見てくれた。うれしかった本当に。でも、私はシェリーさんの代わり。ううん、代わりにすらなれなかった。そして、彼はシェリーさんを生き返らせ一つになった。結局、彼の目にはシェリーさんしか映っていないんだわ」
Seshiry「なら、どうしてこんなことを?」
Alexa「それでも彼が好きなの! 彼を愛しているのよ!」
Seshiry「・・・・・・それであなたは幸せなの?」
Alexa「ええ、幸せよ。セシリー。たとえあの人が私を見てくれなくても、あの人の役に立てるならそれだけでいい」
僕の意識はだんだん遠のいていく。
Alexa「さようなら、セシリー。あなた達と過ごした日々はとても楽しかったわ」
ごめん、アリー。約束守れな・・・・・・

そうだった500年前の僕。Seshiryは約束を守れなかった・・・・・・。
???「ようやくすべて思い出してくれたのね。セシリー」
暗闇の中に光が浮かぶ、その光は女性の形をしていた。
Ceciry「君は・・・・・・アリー!?」
アリー「ええ、やっと会えたわね。セシリー」
Ceciry「アリー、僕は君との約束を守れなかった」
アリー「いいえ、あなたは約束を守ったわ。ちゃんと、帰ってきてくれた」
Ceciry「でも、僕は!」
アリー「いいのよ。また、あなたと出会えたんだから」
Ceciry「アリー・・・・・・君はあの後どうなったの? 未だにこの城に居るってことはやっぱり・・・・・・」
アリー「あなたを見送った後、私は再び城の中へ戻ったわ。城の中はすでにマスター・・・・・・いえ、Lord Everlingによって蹂躙されていた。このままではLord Everlingが城の外に出てしまう。そう思った私は最後にある術をかけた」
Ceciry「術?」
アリー「そう。それはこの城ごと、Lord Everlingを封じること」
Ceciry「じゃ、じゃあAlexa先輩が言っていたこの城の呪いって。君がかけたのか!」
アリー「呪い?・・・・・・そうね。この城にいた多くの人たちを巻き込んでしまったしね。それに6姉妹たちも・・・・・・」
Ceciry「彼女たちに何を?」
アリー「・・・・・・セシリー私に触れてみて、私の記憶をあなたに見せるわ」
僕が光に触れると、アリーの記憶が流れ込んでくる。これは彼女の最期の記憶だ。

アリー「さて・・・いこうかな・・・」
脚の出血は包帯で一時的に止まっているけど、いつ溢れ出してもおかしくないわね。
アリー「時間がない、急がなきゃ」
私は6姉妹の長女Deirdreさまの部屋に向かった。
城内はすでにLord Everlingによって荒らされていた。ここに来るのも時間の問題だろう。
Deirdre「アリー、その怪我は?」
Jenni「一体、城内で何が起こっているの!?」
部屋の中には6姉妹が集まっていた。
アリー「みなさん、これから私が言うことを落ち着いてよく聞いてください」
私はすべてを話した。マスター・・・・・・彼女たちの父親の研究。そしてその研究の結果、何が起こったのかを。
Crysta「そんなこと 信じられないわ!」
Deirdre「・・・・・・私はアリーを信じます」
Crysta「Deirdreお姉さま!?」
Deirdre「お父様の能力ならそれも可能でしょう? それにお父様は亡くなったお母様をとても愛していらしたわ」
Crysta「でも!」
Deirdre「それでアリー、私たちはどうすればいいの?」
アリー「はい、この6つのロケットにあなた方の血を一滴もらえますか? それともうひとつ、あなた方にある術をかけます」
Deirdre「どんな術なのかしら?」
アリー「その術はもしマスターがあなた方を殺したら、発動する性質のものです」
Deirdre「それがお父様を止めることになるのね?」
アリー「はい・・・・・・」
Deirdre「分かったわ。みんなも分かったわね?」
お嬢さまたちは、6個のロケットにそれぞれ血を流してくれた。

そんな中、いまいち事情がよくわかっていないEliseお嬢さまが私に聞いてきた。
Elise「ねえ、アリー。セシリーは?」
アリー「・・・・・・彼はもうこの城に居ません」
Elise「え~、プレゼントくれるって約束してたのに!」
アリー「ああ、それはもしかしてクマのぬいぐるみのことですか?」
Elise「うん、そうだよ。どうして知っているの?」
アリー「彼の部屋にありましたから、エリーゼ様にプレゼントするんだって」
Elise「わ~、ちゃんと約束覚えていてくれたんだ」
アリー「ええ。あ、そうだこれから一緒に彼の部屋に取りに行きましょうか」
Elise「うん!」
Deirdre「アリー、いいの?」
アリー「ええ、術はすでにかけましたから。お嬢様たちは可能なら外にお逃げください」
Deirdre「・・・・・・分かったわ」

私とEliseお嬢さまはセシリーの部屋に向かった。部屋の中はとっても質素で、机と本棚それとベッドがあるだけだ。そんな中、この部屋には似合わないクマのぬいぐるみが置いてある。頭にはリボンがかかっていた。
Elise「これか~、おっきいクマさんだね~」
アリー「ふふふ、そうですね」
セシリーが私にお金を借りてまで買ったんだものね。
Elise「じゃあ、あなたに名前をつけてあげる」
エリーゼお嬢さまは、クマの人形の手を握り考え込む。
Elise「あなたの名前はBilly。よろしくねビリー!」
エリーゼお嬢さまはクマ、ビリーの手を取りぶんぶんか振った。
Lord Everling「・・・・・・ここに居たか、アリー」
アリー「!」
扉をあける音は一切しなかった、壁をすり抜けたの!?
Elise「あ、パパー」
Eliseお嬢様がLord Everlingに駆け寄っていく。
アリー「Eliseお嬢様!」
Eliseお嬢様がLord Everlingに触れた途端、彼女の肉体は消えうせた。その瞬間、彼女の立っていた場所から光が天に伸びる。
Lord Everling「また、この光か。アリー、貴様。娘達に一体何をした!?」
アリー「またと言ったわね。じゃあ、もう他のお嬢様方も・・・」
Lord Everling「ああ、子供の癖に私に説教しようとしたからな。まとめて摂取してやったよ」
アリー「マスター。今、確信したわ。あなたは本当にもう、マスターEverlingではないのね」
Lord Everling「言ったろ。今の私はLord Everlingだ。それよりまだ質問に答えてもらってないが?」
アリー「すぐに分かるわ、すぐにね」
Lord Everling「ふん、まあいい。今度こそ本当にさようならだ、アリー!」
Lord Everlingが指を私に向けた次の瞬間、私は胸を貫かれる。衝撃で後ろに吹き飛び窓ガラスを割って、外に投げ出された。
アリー「くっ!」
落下していく中で私は最後のマナを練る。これが最後。セシリー、私に力をかして! かすむ目を開くと、天に向かって6つの光の柱が立っている。よし!
アリー「6人の娘の命、その死の輝きをもってこの城を包み込んで!」
空に昇っていた6つの光が交わり巨大な魔方陣を描く、その魔方陣は城をすっぽりと包み込んでいた。その魔方陣の中心で私の体が光り輝きそれと同時に力が抜けていく。セシリー、また会えるよね?・・・・・・アリーの記憶はそこで途切れていた。

Ceciry「そう、お嬢様たちが・・・・・・」
アリー「ええ、最後に協力してくれたの」
Ceciry「まって! あのロケットの血は?」
アリー「あれはあなたが帰ってきた時、Lord Everlingを倒すための物よ」
Ceciry「あれを倒すってどうやって? あれは剣も魔法も効かない化け物だよ?」
アリー「そう、確かにあの状態ではいっさい攻撃が通じないでしょうね。でも、同時にあの状態はひどく不安定なの。きっかけを与えてやれば崩れるわ」
Ceciry「そのきっかけになるのが、あのロケットなんだね?」
アリー「ええ、あなたの力を貸して頂戴。セシリー」
Ceciry「うん、今度こそすべての決着をつけよう。アリー!」
僕の意識は再び現在へとかえっていった。


Played in 2005/03/11

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