第53話　Lost Memories～セシリー SIDE～（前編）

Nektulos Forestの奥深くにひっそりと佇むNektropos Castle。遠い昔はダークエルフ達が場内で連日パーティを開き、その明かりが消えることはなかったという。だが今は荒廃が進み、もはや中から明かりが灯ることもなくなっていた。そんな荒れ果てた城の前に6人の冒険者達がやってきた。
Tartalos「ここがかっては白亜城と呼ばれた、ダークエルフ達の城Nektroposか」
Anryu「随分と薄気味悪いところね」
Wesh「そりゃーそうさ。今は誰も住んでいるものはなく、幽霊城なんて呼ばれてるくらいだからね」
Raiolio「まったくこんな所の調査を俺達に依頼するなんて、軍も何考えてるんだか」
Tonan「ぼやくなよ。さ、中に入ろうぜ」
5人が門をくぐっていくが、一人のダークエルフだけは入り口で立ち尽くしていた。
Ceciry「なんだろう、この懐かしい感じは・・・・」
Tartalos「おーい、セシリー。何やってんだ置いてくぞ」
Ceciry「あ、うん。今行くよ」
6人が城の中に入っていく様子を一人の女性が見つめている。その女性の体は透けており、空中に浮かんでいた。
？？？「ようやく帰ってきてくれたのね・・・・」

バタン！
一行が中に入ると同時に門がひとりでに閉じてしまった。
Raioilio「おいおい」
Wesh「どうやら、大歓迎みたいだね」
Tonan「開くか？」
Anryu「だめみたい、何かの力で抑えつけられていてびくともしないわ」
グルルルゥ、低い唸り声と共に1匹の犬が現れる。
Tartalos「犬？　いや、こいつは！」
その犬は透き通るような体をしており、目の位置には眼球がなく不気味な光を放っていた。
Tonan「く、城の中に入るんだみんな！」

城の中は外の荒廃とは裏腹にきちんと掃除されており、テーブルのろうそくには灯が灯っている。
Anryu「・・・・確か今は誰も住んでいないのよね？」
Wesh「そのはずだけどこれは一体・・・・」
Raiolioが窓から外を覗くと、幽霊犬が扉の前に集まっているのが見えた。
Raiolio「くそ！　入り口は完全にふさがれちまったぜ！」
Tonan「奥に進むしかないか。Tart、軍からもらった地図に内部の間取りも書いてあるか？」
Tartalos「いや、森からこの城までの道筋だけだな」
Tonan「そうか・・・」
黙ってしまった一行をよそに、Ceciryは一人で奥へ進もうとしていた。
Tartalos「おい、セシリー。どこ行く気だ！？　道も分からないのにむやみに動くのは危険だ」
Ceciry「・・・・・この階段を下りて右手に行くと礼拝堂があるよ」
Tartalos「なに？　お前ここに来たことがあるのか？」
Ceciry「あ、いやなんかそんな気が」
Raiolio「勘かよ！」
Anryu「でも、ここでじっとしてても始まらないわ」
Tonan「そうだな。とりあえず地下へ行ってみるか」

6人が階段を下りて右に進んでいくと部屋があった、礼拝堂だ。
Raiolio「おいおい、マジに礼拝堂があったぜ。一体どうなっているんだ？」
Anryu「詮索は後よ、お客さんが来たわ！」
Anryuの指差す方向を向くと一人の神父が立っている。彼の体はやはり透き通っていた。
Wesh「Tonan、ちょうどいいじゃないか。今までの罪を聞いてもらったら？」
Tonan「ばか言ってないで構えろ、来るぞ！」
幽霊神父「我らが眠りを妨げるのは何者か！？」
殴りかかってくる神父の前にTonanとRaiolioが立ちふさがり、Tartalosとセシリーがその後方に控え、AnryuとWashが神父の後ろから攻撃を加える。
幽霊神父「一人を多人数で囲むとは、なんと罰当たりな！」
Raiolio「悪いね神父さん。俺は無宗教なんだ、神様によろしく！」
Raiolioの斧が神父を切り裂くと、その体は煙のように消えていった。

Tartalos「ふう、まさか幽霊を相手にするとはね」
Anryu「あら、ここに来る途中も散々Zombieを倒してきたじゃない」
Tartalos「そりゃーそうかもしれんが・・・」
Tonan「し！　まだ居る」
いつの間にか教壇の前に一人の女幽霊が立っていた。
Wesh「しつこいなー、もう」
5人が攻撃を加えようとしたその時。
Ceciry「待って、みんな彼女は・・・・」
Raiolio「なぜ止めるセシリー！？」

CeciryとRaiolioが言い争う間に女幽霊はさらに近づいてきた。
女幽霊「私はAlexa。私は貴方たちの敵じゃないわ、あなた達にお願いがあるの」
Wesh「お願い？　まさか『お前の魂をよこせ！』とか言うんじゃないだろうね～」
Raiolio「お前が敵じゃない証拠は？」
Alexa「こうしてあなた達に危害を加えてないことが、証明にならないかしら？」
Raiolio「・・・ならないね」
Alexa「この城から出たいんでしょう？　私を助けてくれれば自動的にそれは叶うわ」
Tartalos「どうするTonan？」
Tonan「・・・残念だが他に選択肢はなさそうだ。引き受けよう」
Alexa「ありがとう。私の願いは唯一つ、この城からの解放よ」
Ceciry「解放？」
Alexa「あなた達も見たと思うけど、この城に入ってすぐ正門が閉まってしまったでしょう？」
Anryu「ええ。開けようとしてもびくともしなかったわ」
Alexa「この城は一度でも中に入ってしまうと、決して出れないの」
Wesh「どうしてだい、呪われてるとでも言うつもり？」
Alexa「そう。この城は6人の姉妹によって呪いをかけられてしまった。呪いは城だけじゃなく城にいた者たちにもかけられたわ。その呪いによって私たちはこの城から出られなくなってしまったの。私たちに残されたのは緩慢なる死だけだった。でも本当の死がくることはなかった」
Ceciry「え、あなたは死んでいるでしょう？」
Alexa「肉体はね。でも、魂はまだここに縛られたままなのよ」
Tartalos「呪いを解く方法は？」
Alexa「呪いを解く方法は2つ。ひとつは6人の姉妹を殺し、彼女たちが身に付けている6つのロケットを私に持ってきて頂戴。そうしたら私が呪いを解き、私たちは開放される。そしてあなた達も城から出ることが出来るわ」

Tonan「ふむ」
Anryu「でも、私達に殺人をしろと？」
Alexa「ああ、安心して彼女達も私同様に今は幽霊になってしまっているから」
Anryu「そういう問題じゃないわよ！」
Alexa「彼女達を殺すことは、そのまま彼女達を救うことにもなるわ」
Anryu「どういうこと？」
Alexa「彼女たちもまた、自らの呪いによってこの城に縛られている。呪いを解くもう一つの方法。それは私たちに2度目の死、魂の死が訪れる時」
Anryu「じゃあ、自分でけりをつければいいじゃない」
Alexa「どうやって？　幽霊は首を絞めたって死なないし、この城のにある物では体を傷つけることさえ出来ないわ」
Tartalos「つまり、外部の者の手による死だけか」
Alexa「そういうことね」
Raiolio「でもだったらなぜ、外に居た奴等や神父は俺達のことを襲ってきたんだ？」
Alexa「彼らは狂ってしまった。当たり前よね。死ぬ為に生き続けなければいけないなんて、ふつう耐えられないわ。自我をなくせば、ただの怪物になってしまえば、思い悩むことはないもの。でも怪物になってしまいながらも、彼らは死を望んでいるのよ。だから人を襲うの」
Ceciry「何故あなたは死によっての解放じゃなく、呪いの解放を望むの？」
Alexa「憎いからよ。彼女達、6姉妹が！　彼女達の死を見届けずには死ぬに死ねないわ」
Tonan「分かった。彼女達を倒し、ロケットを奪ってこればいいんだな」
Alexa「ええ。6つのロケットが揃った時、また会いましょう。急いでね、生身の人間はこの城に居るだけで生気を吸われてしまうわ」
そう言うとAlexaの姿は掻き消えた。

Raiolio「まったくとんだことに巻き込まれたもんだぜ。これだから軍からの依頼は嫌なんだ！」
Tonan「他にここから出る方法もなさそうだし、仕方ないさ」
Wesh「ここで死んじゃえばおいらたちも彼らの仲間入りして、城から出ることを思い悩むこともなくなるけどね～」
Anryu「縁起でもないこと言わないでよ！」
Tartalos「まあ、まあ。とにかくタワーを目指そうぜ」
6人は1番近くのタワーに入っていった。

タワーに入ると上と下の階段があった。
Tonan「どっちだと、思うセシリー？」
Ceciry「・・・・・・下に行くとベッドルームがあるはず」
Raiolio「また、勘かよ」
Tonan「まあ、下に行ってみるか」
階段を下りていくとセシリーの言うとおりベッドルームがあり、一人の少女が佇んでいた。
Raiolio「・・・・・・おい、セシリー。お前本当にここに来たことないのか？」
Ceciry「うん、そのはずだけど・・・・」
Tartalos「ま、とりあえずそれは置いといて彼女を倒そう」

6人が幽霊少女に近づいていくと、突然泣き出した。
Elise「いや　来ないで！　どうして私たちをそっとしておいてくれないの！？」
Tonan「俺達は君を解放しにきたんだ」
Elise「解放なんてされなくていい！　いいから放っておいて！」
Anryu「どうするみんな？」
Raiolio「話聞くだけ無駄だろ、問答無用で殺しちゃおうぜ」
Anryu「そんな乱暴な！」
Tonan「いや乱暴だがRaioの言うことはもっともだ。これから5人の姉妹も殺さなきゃならない。会話をすると剣先が鈍る・・・やるぞ、みんな！」
Eliseは必死に抵抗したが、やがてWeshのレイピアが彼女を貫いた。
Elise「死にたくない、死にたくないよ・・・・・」
声は次第に小さくなり消えていった。彼女が立っていた場所には一つのロケットだけが残っている。部屋の中を見回していたTartalosが1冊の本を見つけた。
Tartalos「う～ん、読めないな。おい、セシリーちょっと来てくれ。ダークエルフのお前ならこの文字読めないかな？」
Raiolio「いくら同じダークエルフって言ったって大昔になくなった文字だぜ、読めるわけが・・・」
Ceciry「う～ん、日記みたいだね」
Tonan「読めるのか！？」
Ceciry「うん。でも、文字が所々かすれていて読めない」
Tonan「判読できるところだけ、読み上げてみてくれ」
Ceciry「OK。えっと・・・・・・『今この城で一体何が起こっているの？　お姉さまたちは無事なのかしら。これも・・・・・・さまが・・・・・・かしら？』」
Wash「訳分からん」
Tonan「ふむ。まあ、とりあえず他の姉妹の日記も残っていたら読んでみてくれセシリー」
Ceciry「うん」
Tonan「それじゃあ、次のタワーに行こう」

一行は次のタワーへ移動中、奇妙な部屋を見つけた。
Raiolio「ダーツにトランプ。ここはゲーム部屋だったのか」
Ceciry「・・・・・・」
Ceciryは部屋に入った瞬間、奇妙な感覚に捕らわれた。

一組の男女ダークエルフがダーツを行っている。
？？？「・・・リーどうしたの？」
・・・リー「なんでもないよ、ア・・・」
ア・・・「そう？　ならいいけど、次は貴方の番よ」
・・・リー「よ～し、今日こそ負けないよ！」
ア・・・「ふふふ」

Tartalos「おい、セシリー」
Ceciry「・・・・・・」
返事のないセシリーの肩をTartalosが掴み、もう1度声をかける。
Tartalos「どうした、セシリー！？」
Ceciry「え？　あ？」
Tartalos「大丈夫か？　お前この城に入ってからなんか変だぜ」
Ceciry「あ、うん。Tartは今の見た？」
Tartalos「見たって何を？」
Ceciry「・・・ううん、何でもない」
Tartalos「本当に大丈夫か？」
Ceciry「平気、平気。この城はダークエルフの故郷だし、ちょっと感傷的になってるだけだよ」
Tartalos「なら、いいが」
部屋を出て行く5人の後を追いながらセシリーは考える。
Ceciry「間違いない。僕は以前ここに来たことがある。でも一体いつ？」

6人は次々とタワーに入っていき六姉妹達を解放していった。
Shelia「・・・・・・・・・・・。」
Jenni「貴方達、誰？」
姉妹達は皆、生前の記憶はあまり残っていないようだった。
Tonan「手がかりになりそうな物は、やはり彼女達の日記か」
Tartalos「そうだな。おい、セシリー頼む」
Ceciry「OK」
どの日記も字がかすれていてほとんど読めなかったが、分かったこともいくつかあった。
Ceciry「どうやらこの城を所有していたのはEverling伯爵家で、さっき会ったElise達は8代目当主の娘みたいだね。時代は日記の日付によると、500年前の昔」
Tartalos「そんな昔に滅んでいたのか」
Ceciry「うん、何故この城が滅んだのかまではわからないけど、六姉妹の内、残りの3人の名はMelanieとCrysta、そしてDeidre」
Tonan「とにかく、残りの3姉妹も解放していくしかないか」

残る3人のうちMelanieとCrystaは同じ部屋にいた。
Melanie「あら、こんなところにお客とは何年ぶりかしら？　ねえ、クリスタ」
Crysta「502年と3ヶ月11日ぶりよ。メラニーお姉さま」
Tonan「・・・・いくぞ！」
Melanie「古代の勇者の魂よ、我が呼び声に応えよ！」
Crysta「サラマンダーちゃん。かも～ん！」
2人の姉妹はそれぞれゴーレムと火トカゲをよびだした。
Tonan「く、召喚術か。Tartどうすればいい？」
Tartalos「ゴーレムには僧侶のキャンセルマジックが有効で、火トカゲにはウィザードの氷の呪文が効くんだが」
Wesh「どっちも居ないじゃーん」
Tartalos「なら、本体を叩くしかない」
Tonan「よし。俺が敵を全部引きつけるから、みんなはCrystaのほうから攻撃してくれ！」
Raiolio「めんどくせー。俺がまとめてやっつけてやるぜ、Stunning Cry！」
Raiolioの斧が光を放ち、火トカゲとゴーレムの影を消す。
Melanie「なかなかやるわね。でも、Rockslide！」
Melanieが手をかざすと、猛吹雪が6人に襲い掛かる。
Wesh「うわ、さむっ！」
Anryu「いけないNoxious Symphony！」
Anryuの静かだがよく通る歌声が部屋中に響き渡る。体の中から暖かいものが広がり、吹雪の寒さをやわらげてくれた。Crystaがさらに呪文を唱えようとするが。
Wesh「Slice Throat」
姿を消し、いつの間にか後ろに回りこんでいたWeshのレイピアがCrystaの体を貫く。
Crysta「メラニーお姉さま・・・・」
Melanie「クリスタ！！」
駆け寄るMeanieの前でCrystaの姿は透けて消えていく。そして、
Tonan「どこを見ている！」
Melanie「！？」
Tonanの剣がMelanieの体を切り裂いた。

Tonan「ふう、大丈夫かみんな」
Wesh「なんとかね～」
Tartalos「しかし、姉妹達は魔法を使ってくることが多いな」
Ceciry「うん。元々そういう家系だしね」
Tartalos「・・・・・・。」
Raiolio「この部屋には日記はないみたいだな」
Tonan「そうか。次で最後だし、ここで少し休んでいこう」

Anryuは姉妹達が使っていた部屋を歩きながら考える。
Anryu「・・・本当に彼女達がこの城の幽霊達を縛っていたのかしら？」
Tartalos「君もそう思うかAnryu」
Anryu「あらいやだ、聞こえたのTart」
Tartalos「ああ、6人の姉妹は生前の記憶をほとんど失っていた。一応自我は保っていたにも関わらずだ」
Anryu「でも、それは500年も時が経っているからじゃなくて？」
Tartalos「そうかもしれないが、自分達の名前はしっかり覚えているようだったな。それと・・」
Anryu「それと？」
Tartalos「君も気づいているだろうが、セシリーの事だ」
Anryu「彼が何か？　確かにこの城に入ってからずっと様子が変だけど」
Tartalos「あいつは以前ここに来たことがあるのかもしれない」
Anryu「え、でも本人は来たことないって言ってたわよ」
Tartalos「ああ、だが言動が不自然すぎる。もしかしたら・・・・」
Tonan「おーいAnryu、Tartそろそろ行くぞ」
Tartalos「分かった、今行く」
Tartalos「ともかくセシリーから目を離さないほうがいい」
Anryu「・・・・分かったわ」

Tonan「君で最後だ、Diedre！」
Diedre「ああ、ようやく解放されるのね・・・・」
Diedreは瞳を閉じ抵抗する素振りさえ見せずにTonanの前に立っている。
Tonan「・・・・・・く」
Tonanは剣を振り上げたままの姿で止まってしまった。
Diedre「どうしたの？　さあ早く私を解放して」
Raiolio「どけ、Tonan」
Raiolioの斧が、Diedreを切り裂いた。
Diedre「ありがとう。やっと自由になれた・・・・」
Diedreは満ち足りた笑顔で消えていった。
Tonan「すまない、Raio」
Raiolio「一体どうしたんだ、Tonan？」
Tonan「さすがにあんな風に無抵抗だと・・・な」
Raiolio「相変わらずあまいなお前は」
Tartalos「とにかく　これで6個のロケットが集まったわけだ」
Anryu「でも、本当にこれでよかったのかしらね」
Tonan「それはどういう・・・」
Alexa「よくやってくれたわね。あなた達」
突然、Alexaの声が部屋に響き渡った。
Tonan「どこだAlexa？　お前の望みどおり6姉妹を解放したぞ！」
Alexa「そこの壁に隠し通路があるからそこを通ってきて頂戴。私はその先で待っているわ」

隠し通路を通っていくと開けた場所に出た。部屋の真ん中にAlexaが立っている。
Tonan「これが姉妹たちが身に付けていた、6個のロケットだ」
バシッ
ロケットを渡そうとするTonanの手を、Alexaは払いのけた！　床にロケットが散らばる。
Tonan「何をする！？」
Alexa「ふふふ、あーはっはは。ついにやったわ！」
突然大声で笑い出したAlexaに6人は唖然となった。
Raiolio「何がおかしい！」
Alexaは笑うのやめ、こちらに向き直った。
Alexa「あなた達は本当によくやってくれたわ」
Tonan「一体どういうことだAlexa！　そのロケットで6姉妹の呪いを解く約束だろ！」
Alexa「ええ、だからその呪いは解けたわ。彼女達6姉妹を殺すことによってね」
Raiolio「なんだ、それじゃよかったじゃないか。じゃあ、俺たちはこの城から出ることが出来るんだな」
Alexa「いいえ、あなたたちをここから出すわけにはいかない。あなた達は今ここで死ぬのよ！」
Tonan「なんだと！？」
Alexaが何かを呟くと掌に光の玉が生まれた。
Alexa「本当にありがとう。せめてものお礼に一瞬で殺してあげる。Ancient Pious Consclence！」
光の玉が6人に迫り爆発した！　薄暗かった部屋がその瞬間だけ真昼のように輝く。やがて光が消え、部屋は元の暗さを取り戻した。

AlexaはTonan達が立っていた場所に何もないことを確認すると、部屋の奥に移動しようとした。
Alexa「さて、500年ぶりだから色々準備しなきゃね」
Wesh「何の準備かな？」
Alexa「なに、貴様どうして！？」
Wesh「悪いけど、おいらは最初からあんたを疑っていたからね。会話中いつでも飛べるようにしておいたのさ！」
Alexa「飛ぶですって？　まさかEvac！？」
Wesh「そう古い呼び名だとEvacかな。その応用で近くに飛んだわけ、さすがに6人も運ぶのは疲れたよ。という訳で後は頼んだよ、Tonan」
Alexa「は！？」
Alexaが後ろを振り返ろうとしたとき、その体から剣が生えた！
Alexa「きゃああああ！」
Tonan「君を解放してあげるよ、Alexa」
Alexa「油断したわね・・・・・・まあ、いいわ。もうあの方は目覚められたのだから。私はそれだけで・・・・ェ様」
Alexaが静かにひとみを閉じると、その体は消えていった。

Tonan「Wesh、大丈夫か？」
Tonanは床にへたりこんだWeshに近づき問い掛ける。
Wesh「全然大丈夫じゃないよ！」
Raiolio「・・・・大丈夫そうだな」
Anryu「でも、とっさによくやってくれたわ。ありがとう、Wesh」
Tartalos「そうだな。助かったよ、Wesh」
Wesh「お礼はいずれ形で返してね！」
Tonan「じゃあ、町に帰ったらみんなで一杯ずつおごるよ」
Wesh「OK、約束だからね～」
Raiolio「じゃあ、帰りますか」
5人は部屋の外に出ようとしたが。
Anryu「あれ、セシリーは？」
5人が部屋の中を見回すと、Ceciryは部屋の奥の壁の前に立っていた。
Raiolio「おい、セシリー何やってるんだ。帰るぞ」
Ceciryははっとして振り返る。
Ceciry「あ、うん。でも、帰る前にもう少し見学して行かない？」
Raiolio「おいおい。こんな城からは、とっととおさらばしようぜ」
Ceciry「でも、Alexaの最後の言葉、気にならない？」
Tartalos「確か何かの準備するとか言ってたな」
Anryu「それと、あの方が目覚めたとかなんとか言ってたわね。う～ん、確かに気になるわ」
Tonan「でも、もうここで行き止まりみたいだしな」
Ceciry「大丈夫だよ、ほら」
ゴゴゴゴ
Ceciryが壁に触れると、突然壁が開いた。Ceciryはためらいなく壁の奥に入っていく。
Tartalos「セシリー、お前・・・」
Tonan「行こう、行けば分かるさ」

壁の奥に入ると光が5人を迎えた。いずれもろうそくの光ではなく、どうやら魔法の光のようだ。部屋の中にはビーカーやフラスコ、大きな水槽、本棚などが並んでいる。中でも目を引くのが、真ん中にあった大きな機械だ。一足早く部屋の中に入ったセシリーは一つの机の前に立っていた。
Raiolio「なんだここは？　まるで何かの研究所みたいだな」
Anryuが本棚にあった本を取ってみると、辺りにほこりが舞った。
Anryu「ごほっごほ。使われなくなってから大分立つみたいね。中身も古代ダークエルフ語でかかれているみたい」
Tartalos「何の研究をしていたんだろうな」
？？？「知りたいかね？」
Tonan「誰だ！？」
Tonanが声のした方向を見ると、一人の男幽霊が佇んでいた。
？？？「名前か。そんな物はとうに忘れてしまったよ。どうしても呼びたければ。そう、Lord Everlingとでも呼ぶがいい」
Tonan「では、あなたが8代目Everling伯爵ですか」
Lord Everling「そう呼ばれたこともあったな。まあ、そんなことはどうでもいい。さて、すまないが君たちには協力してもらおうか」
Tonan「何の協力ですか？」
Lord Everling「なにせ500年振りに起きたものだから、腹が減ってね」
Raiolio「なんだ食べ物か。じゃあ、俺様特製のシカパスタでも・・・」
Lord Everling「いや、私がほしいのはそんな物ではなく」
Raiolio「あ、今そんな物って言った！？　文句は一口食べてから言ってもらいたいね！　今までどんな美食家たちの口も唸らせてきたんだから！」
Wesh「美食家っておいらたちのこと・・・・・・？」
Lord Everling「いやいや、私がほしいのは・・・お前たちの体だ！」
Anryu「え？」
Wesh「またかい・・・」

Tonan「みんな、構えろ！」
Lord Everling「魔界の地に潜みしデーモンよ！　我との契約に従い、ここに姿を現せ！」
Lord Everlingの声に応えるかのように、部屋の中の悪魔の石像が動き出す。
Tonan「Tart、この石像は！？」
Tartalos「ガーゴイルだな。石像に魂を封じ込めるなんて、今の魔法技術じゃとても無理だ。呪文の内容から察するに、異世界から魂を引っ張ってきてるみたいだが」
Wesh「解説はいいから弱点は！？」
Tartalos「わからん」
Wesh「だ、だめじゃーん」
Tonan「Raio、ガーゴを抑えて。Tartは魔法で援護を。残りはLord Everlingに！」
All「OK！」
ガキィィン
Raiolioが斧をガーゴイルに振り落とすが、ガーゴイルはちっともこたえた様子はない。
Raiolio「堅え～」
Tonan「Raio、無理するな。抑えるだけでいい！」
Raiolio「あいよ」
Tonanが剣をLordに向け、WeshとAnryuがLordの背後に回る。
Tonan「いくぞ！」
3人が一斉に飛びかかる。武器は確かにLordの体を貫いたが、すべてすり抜けてしまった。危うくTonanの剣がWeshに当たりそうになる。
Wesh「おわっち、危ない。Tonan殺す気！？」
Tonan「剣が効かない！？」
Anryu「今までの幽霊には効いたのになんで！」
Lord Everling「フハハ。私を幽霊如きと一緒にするなよ、Scorching Pulse！」
氷の槍がTonan、Wesh、Anryuに襲いかかる。
Anryu「きゃあ」
Wash「さむっ！　いたっ！」
Tonan「ぐっ！」
Tartalos「わが身に宿りしマナよ。彼らの傷を癒したまえWords of Shadow！」
3人の体に光が降り注ぎ傷を治していく。

Lord Everling「次いくぞ！　Ball of Flames！」
ガーゴイルを相手にしていたRaiolioに火の玉が飛んだ。
Raiolio「ぐわあ」
Tartalos「く、Spiritual Healing！」
Tonan「くそ、このままじゃ！　セシリー俺達の剣にEnchant（魔力付与）してくれ！」
TonanはLordと向かい合いながら、Ceciryに向かって叫ぶが返事はなかった。Ceciryは戦闘が始まってからも、相変わらず机の前に立っていた。
Lord Everling「セシリーだと？」
Tonanの声に興味を覚えたのか、LordがCeciryの方に向かう。
Tartalos「セシリー、いったぞ！」
Ceciry「え？」
ようやく我に返ったCeciryが振り返ったとき、Lordは目の前に来ていた。LordとCeciryの目がかち合った瞬間。
Ceciry「あ・・・・・・」
セシリーの意識は暗闇に落ちその体は崩れ落ちた。
Lord Everling「なんだ？」
Tartalos「セシリー！　セシリー！！」

Played in 2005/03/11